顧客役に「厳しく反論してください」と頼むだけでは、言い返す練習になりがちです。初回商談で練習したいのは、反論に勝つことより、現状を変える理由があるのかを確かめる質問です。
ここでは、既存の運用を変える必要性がまだ明確でない顧客との初回商談を扱います。製品の機能を説明する前に、業務の流れと、判断に必要な条件を聞き取ることを目標にします。
会社、製品、会話はすべて架空の教材です。実在顧客の反応予測や、実際のAIとの会話ログではありません。
顧客像より先に、この商談で確かめたいことを決める
顧客は、営業担当40名の会社で月次報告をまとめる営業企画責任者です。各部門が表計算ファイルを提出し、責任者が集計しています。いまのところ、ツールを変更する予定はありません。
こちらは架空の業務管理サービスを提案する営業担当です。今回の目標は、デモの日程を無理に取ることではありません。現状の報告作業に課題があるか、あるなら次に何を確かめれば検討できるか、を把握することです。
練習前に、次の3項目だけを置きます。
| 項目 | 今回の設定 |
|---|---|
| 場面 | 初回の情報交換。まだ製品提案前。 |
| 顧客の立場 | 営業企画責任者。変更による現場の負荷も気にしている。 |
| 練習目標 | 業務の流れ、困る条件、次に検証することを聞く。 |
AIが途中で営業コーチへ戻らない指示を作る
初回商談の顧客役をしてください。
顧客:
営業担当40名の会社の営業企画責任者。
部門別の表計算ファイルを集めて月次報告を作っています。
現時点ではツールの変更予定はなく、導入後の現場負荷を気にしています。
会話ルール:
・顧客として自然に応答し、一度に論点を一つだけ返す
・私が質問する前に、課題や予算や決裁者をすべて説明しない
・私の質問に関連する情報を、会話の流れに合わせて答える
・根拠のない効果や機能をこちらが断定したら、確認を求める
・反対すること自体を目的にせず、妥当な質問には答える
・途中で助言、点数、模範解答を出さない
・私が「終了」と言ったら、顧客役を終える
最初の発言は「今のやり方で、大きく困っているわけではありません」で始めてください。
これは架空の練習です。実在する企業の情報を推測しないでください。
テキストで始めると、自分の発言を後から引用して確認できます。音声機能の利用可否に依存せず、まず質問の順序を練習できる形です。
すぐ製品を説明した場合、何が確かめられないか
顧客:今のやり方で、大きく困っているわけではありません。
営業:当社のサービスなら集計を効率化できます。まずデモをご覧ください。
顧客:いまも報告はできていますし、覚えることが増えるのは避けたいです。
この会話では、現在の集計作業も、変える価値がある条件も分かっていません。「デモに興味がない顧客」と決めつける前に、質問を変えます。
同じ発言から、質問を組み直した会話例
1往復目:いまの業務を聞く
顧客:今のやり方で、大きく困っているわけではありません。
営業:承知しました。いま月次報告は、どのような手順で完成させていますか。
顧客:部門から表を集めて、私が項目を揃えて集計しています。
2往復目:面倒だと決めつけず、条件を聞く
営業:その中で、予定どおりに進みにくいのはどんなときでしょうか。
顧客:数字の定義が部門ごとに違うと、確認の往復が増えます。
3往復目:影響を確認する
営業:確認の往復が増えると、どの作業に影響しますか。
顧客:報告そのものは間に合いますが、会議前に分析する時間が短くなります。
4往復目:製品で解けると断定せず、次の確認を提案する
営業:それなら、まず確認の往復が起きる項目と、現在の提出形式を整理するのがよさそうです。共有可能なサンプルを使って、定義を揃える方法を一緒に確認する機会は持てますか。
顧客:実データは出せませんが、項目名だけのサンプルなら確認できます。
4往復で分かったのは、集計そのものより、数字の定義を確認する往復が分析時間を圧迫していることです。次の打ち合わせでは、製品の全機能を説明するより、定義を揃える方法と現場の負荷を確認する方が、顧客の発言に沿っています。
終了後は、発言を根拠に振り返る
終了します。営業側の発言を根拠に振り返ってください。
確認する項目:
1. 現在の業務の流れを聞けたか
2. 困る条件と、影響する業務を分けて聞けたか
3. 製品が解決できると根拠なく断定しなかったか
4. 次回確認することを具体化できたか
各項目を「確認できた・まだ確認できていない」で整理してください。
根拠となる私の発言を一つ示してください。
改善する質問は一つだけ提案し、私が答えるまで次の練習を始めないでください。
この完成例なら、現状の流れと業務への影響は聞けています。一方、確認作業の頻度や、誰が定義の変更を決めるかはまだ分かりません。次は「定義を揃える場合、どなたとの合意が必要になりますか」と質問を追加する余地があります。
「共感が足りない」といった抽象的な評価ではなく、どの情報が不足しているかまで戻ると、次の練習が具体的になります。
反応を厳しくするより、検討条件を一つ変える
次の練習では、会社も業務も同じまま、「繁忙期なので今四半期は運用変更できない」という条件だけを追加します。直ちに導入を迫るのではなく、変更せずに確認できることを相談できるかを見ます。
AIが高く評価しても、実商談で成功する保証にはなりません。顧客役の設定自体がこちらの作った仮定だからです。練習は、質問の癖や説明しすぎる箇所を見つけるために使います。
商談準備を、毎回同じ依頼で済ませないために
Prompt Readyでは、用途と背景情報から生成AIへ渡す依頼文を整理できます。今回なら「初回商談」「製品説明より現状把握」「会話中は助言を出さない」という条件を含め、コピー前に確認します。
依頼文を貼り付けたAIが顧客役になり、会話の終了後に振り返りを行います。商談段階や相手の立場を変えるときは、Prompt Readyで背景と練習目標を整理し直してから、次の練習を始めます。
実際の打ち合わせ後は、会議メモからTo-Doを整理する方法で、次回の確認事項を残せます。
参考情報
- OpenAI: Prompt engineering best practices for ChatGPT
- Toybird Labs: Prompt Readyの使い方