「導入費用は年間36万円、11月から開始できます」。短くて分かりやすい要約でも、初期費用や対象拠点が抜けていたら、社内の判断には使えません。
資料を要約するときは、短くすることより先に、読む人が何を決めるのかを定めます。ここでは、導入可否を検討する上司向けのメモと、準備する実務担当者向けのメモを、同じ資料から作り分けます。
使うのはこの記事用の架空の提案資料です。長い資料で起こる読み違いを、5つの短い節へ集約しています。実在の30ページ資料を検証した結果ではなく、要約を確認するための教材です。
サンプル資料:本文と脚注を一緒に読む
[S1: 提案の概要]
業務管理サービスを11月1日から全拠点へ展開する計画案。
社内の採否は10月20日までに決めたい。
[S2: 費用]
初期設定費用12万円。月額利用料3万円。
初年度は12か月分の利用料が発生する。すべて税別。
初年度の必須費用は、初期設定と月額利用料のみ。
[S3: 利用人数]
今回の見積もりは25名分。26名以上の追加料金は本資料に記載がない。
[S4: 運用条件・脚注]
初回の開始対象は1拠点とし、ほかの拠点への展開日は試行後に協議する。
11月1日の開始は、利用者一覧と権限設定が10月23日までに確定することが条件。
[S5: 付録・実施体制]
社内の責任者は未定。操作説明会の日程も未定。
導入による作業時間の削減率は、まだ測定していない。
S1は「全拠点」と書いていますが、S4は「初回は1拠点」です。ここをAIが読みやすく整えて、一方だけを残してしまうと、重要な確認事項が消えます。
最初に、結論と根拠の対応表を作る
この資料を、導入可否を検討する社内メモへ整理してください。
まず次の項目を表で抽出してください。
・費用と計算条件
・開始日と前提条件
・利用範囲と対象者
・未決事項
・本文と脚注の食い違い
各行に根拠の節番号を付けてください。
資料にない条件は推測しないでください。
資料に書かれた金額と、そこから計算した金額を区別してください。
矛盾する記述は解決したことにせず、両方を示してください。
[サンプル資料を貼り付ける]
編集上の完成例は次のとおりです。これはAIの実測出力ではなく、何を残すべきかを示す見本です。
| 判断材料 | 整理結果 | 根拠 |
|---|---|---|
| 初年度の費用 | 48万円。12万円+3万円×12か月という計算。 | S2 |
| 人数 | 25名分。26名以上の単価は未記載。 | S3 |
| 開始予定 | 11月1日。ただし一覧と権限設定が10月23日までに確定することが条件。 | S4 |
| 展開範囲 | 「全拠点」と「初回1拠点」が食い違うため要確認。 | S1、S4 |
| 社内責任者・説明会 | どちらも未定。 | S5 |
| 時間削減効果 | 未測定。改善率を確定できない。 | S5 |
「48万円」は資料にそのまま書かれた数字ではなく、明示された条件から計算した値です。「11月1日」は無条件に始められる日ではありません。この区別も、要約に残します。
上司向けには、判断を止めている点を先に置く
初年度費用は税別48万円です。11月1日開始には、10月23日までの利用者一覧・権限設定の確定が必要です。展開範囲に「全拠点」と「初回1拠点」の食い違いがあり、採否を決める前に確認が必要です。26名以上の費用と社内責任者も未確定で、作業時間の削減率は未測定です。
これなら、上司が追加確認を指示すべき項目が分かります。元資料の章順をそのまま縮めるよりも、判断に必要な情報が前へ出ています。
実務担当者向けには、準備と未割当を分ける
| 準備すること | 期限・扱い | 確認が必要な点 |
|---|---|---|
| 利用者一覧を確定する | 開始条件として10月23日まで | 作成担当者は資料に記載がない。 |
| 権限設定を確定する | 開始条件として10月23日まで | 設定の責任者を決める必要がある。 |
| 対象拠点を確認する | 展開計画の確定前 | S1とS4の食い違いを提案元へ確認する。 |
| 操作説明会を調整する | 日程未定 | 実施日と参加者を決める。 |
担当者欄を埋めるためだけに「情報システム部」などを足してはいけません。資料に記載がないなら、割り当てる前の確認事項です。
「短くなったか」ではなく、5つの問いで照合する
このケースで確認したいのは、初期費用を落としていないか、開始条件を残しているか、対象範囲の矛盾が消えていないか、追加人数の費用を捏造していないか、未測定の効果を数値化していないか、の5点です。
良い要約とは、すべてを断定した文章ではありません。判断できる部分と、確認が必要な部分を、短いまま区別した文章です。
本当に長い資料を扱うときも、最後は原文へ戻る
章ごとの抽出表を作り、それをまとめる方法は使えます。ただし、部分要約の時点で脚注が落ちていたら、その要約だけを統合しても元には戻りません。
章やページごとに参照番号を付け、抽出結果と元資料を対応させます。最後のメモに残した数字、義務、例外、矛盾は、原文でもう一度確認します。ページ番号を読み取れない場合は、AIに番号を推測させず、見出しや短い引用を手掛かりにします。
PDFや表が読み取れない部分は、人が確認する対象として残します。AIが読めていない資料を、読めた前提で要約させることが一番大きな取り違えにつながります。
読み手別の依頼文を、日々の仕事で使い分ける
Prompt Readyが役立つのは、文書の判断を任せることではなく、同じ資料でも、誰のどんな判断に使うかを整理して頼むことです。
上司向けなら「費用・条件・判断を止める未決事項」、実務担当者向けなら「準備・期限・未割当」を背景情報へ入れ、生成された依頼文を確認します。原資料の読み取りや要約は、貼り付け先のAI環境で行う作業です。Prompt Readyは依頼文を作るアプリであり、PDFを読み取って要約を返すAIではありません。
資料の要約後、複数案を選ぶ段階では、見積もり条件を揃える比較表へ進めます。
参考情報
- OpenAI: Prompt engineering best practices for ChatGPT
- Toybird Labs: Prompt Readyの使い方